さて、表題の件です。
以下の記事で「大学入試を意識した問題」と書きました。
大学入試では条件を整理して、範囲を絞り込み、実験によって解を導き出す整数問題が良く出題されます。
以下 2016年度 京都大学 理系 第二問より引用
素数 p,q を用いて p^q + q^p で表される素数を全て求めよ。
※^ は*乗の意
引用終わり
中学生でも解ける問題だと思いますので是非解いてみて下さいね。
下の方にSharari-manの解答を載せておきます。
さて、解答です。
■範囲の絞り込み
pとqは素数ですから pとqは共に「2以上の整数」である。
また、p^q+q^pはpとqの最小値2を代入すると
p=2,q=2より 2^2+2^2=8
よって p^q+q^p≥8
【偶奇による絞り込み】
p=偶数 q=偶数の場合
p^q+q^p=偶数 となり 偶数の素数は2のみゆえに不適
p=奇数 q=奇数の場合
p^q=奇数 q^p=奇数 奇数+奇数=偶数 となり偶数の素数は2のみゆえに不適
p=偶数 q=奇数 あるいは p=奇数 q=偶数 の場合
p=偶数 q=奇数
p^q=偶数 q^p=奇数 p^q+q^p=奇数 となり素数の可能性がある。
p=奇数 q=偶数の場合はも同様に素数の可能性がある。
素数の偶数は?
素数の偶数は2のみです。
よって上の関係は
p=2 q=奇数、p=奇数 q=2 の場合のみ素数の可能性がある
と言い換える事が出来ます。
以上の内容をまとめると以下のようです。
p=2 q=奇数、p=奇数 q=2 のいずれかの場合のみである。
2^q+q^2≧8 (p=2)
p^2+2^p≧8 (q=2)
qは奇数の素数だから q≧3
対称性から 以下では p=2 の場合のみを考える。
ここから倍数判定で絞り込んでいくのが最も早いでしょう。
【3の倍数判定】
2^q (q≧3)を判定していきます。
2を3で割った時の余りは 2です。これは合同式では -1 と表記出来ます。
2≡-1 (mod3)
よって
2×2≡-1×-1=1(mod3)
2×2×2≡-1×-1×-1=-1(mod3)
となります。
qは奇数ですから以下のように言えます。
2^q ≡ -1 (mod3)
次にq^2を判定します。
qを3で割った場合の余りを考えます。
q≡0、q≡±1
のいずれかです。
※ちなみにmod3 は ≡0 ≡±1 となり非常に使い易いので良く出てきます。
よって q^2 は ≡0^2 、≡±1^2 のいずれかですから
q^2≡0 (mod3)
q^2≡1 (mod3)
という事が分かります。
次に 2^q+q^2 を判定します。
2^q ≡ -1 (mod3)
q^2≡0 (mod3) q^2≡1 (mod3)のいずれか
ですから
q^2≡0 (mod3) の場合
2^q + q^2 ≡ -1 + 0 =-1(mod3)
q^2≡1 (mod3)の場合
2^q + q^2 ≡ -1 + 1 =0(mod3)
である事が分かります。
q^2≡1 (mod3)の場合において 2^q + q^2 ≡0(mod3) ですから、3で割り切れるということです。
3で割り切れる素数は3のみですが、2^q + q^2≧8 のため不適。
よって、q^2≡1 (mod3)の場合、2^q + q^2 は素数ではない。
よって q^2≡0 (mod3) の場合 のみ 2^q + q^2=素数 となる可能性がある事が分かる。
さて、ここで q^2≡0(mod3) となるとなるqを考えると
q=3 しかない事が分かります。
q^2 ≡0(mod3) ですから q ≡ 0(mod3) しかありえないからです。
q≡0 (mod3) となる素数は3以外ありませんから q=3 が確定します。
p=2、q=3を p^q+q^pに代入すれば 2^3 + 3^2 =17 となる。
以上の事から
p^q + q^p で表される素数は 17 のみである。
さて、如何だったでしょうか?
大学入試における整数問題ではこのように範囲を絞り込み、実験によって確かめていくという問題が良く登場します。
不等式や偶奇によって範囲を絞り込んでいき、倍数判定の実験に確かめ、絞り込んでいくという形です。
(mod2)、(mod3)は非常に使い易く、整数問題で頻出です。
x≡±1 (mod3) という形は 計算が非常に簡単になるからです。
例えば x≡-1 (mod3)の時
x^2≡1(mod3)
x^3≡-1(mod3)
x^4≡1(mod3)
・・・・・
このように数字が増加せず、指数部分の偶奇で仕分け出来るため非常に使い易くなっています。
さて、冒頭に書いた灘中学の問題ですが、本問題と同じように範囲を絞り込み、実験を実施して解く問題です。
同様の問題は筑駒、開成などの難関中学においても良く出題されます。
「このように試行錯誤して解くような問題に対応する能力を身に付けさせておきたい」
という中学側の意向が見えますね。
灘中学や筑駒に出題される、このレベルの問題を解けるお子様は、その時点で数学能力がかなり高いでしょうから、進学実績が良いのも当然の結果と言えます。
整数問題は親子で楽しく学べる数学の問題ではないかと思います。
中学レベルの知識で解ける問題も多いですからね。
今回の問題では mod を使っていますが、 modを使わずとも、算数的に「余りの規則性」に注目して解けば同様の解答になります。
ぜひ、親子で一緒に学んでみて下さいね。
我が家の学習事例が少しでも家庭学習に取組む皆様の御参考になりましたら望外の喜びです。
ではまた!
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