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中学受験算数の特殊算について

2024.3.6 加筆修正

さて、本記事は受験算数に登場する特殊算について私見を述べる記事です。

受験算数と数学の関係性や受験算数を学ぶ目的に関して私見を述べています。

目次

特殊算とは

中学受験算数において用いられる方程式などの数学的な技法を出来るだけ用いない計算手法の事です。

つるかめ算
消去算
和差算
旅人算
濃度算
天秤算
ニュートン算

など沢山の「特殊算」が存在します。

これらは

方程式を使わず、図表を用いて、感覚的に理解しやすいようにはどうすれば良いか?
早く計算するためにはどうすれば良いか?

というコンセプトに基づき発展してきた手法だと考えております。
ちなみに消去算などは殆ど連立方程式そのものであり、「特殊算」なのか良く分かりません。
「方程式」と呼ばないために「特殊算」と呼称しているのかもしれません。

例)和差算

Aクラスの人数は60人で男子は女子よりも8人多いそうです。Aクラスの男子の人数と女子の人数はそれぞれ何人になるか求めなさい。

男子の人数:(60+8)÷2=34人・・・・①
女子の人数:(60-8)÷2=26人
よって 男子は34人、女子は26人

方程式で解けば Aクラスの男子を X、女子をX-8とすれば

60=2X – 8 という式が導けます。

よって
60+8 = 2X
(60+8)÷2 = X ・・・・②
X=34

ここで①式と②式に注目すると全く同じ形である事に気付きます。

このように特殊算を使わずとも方程式で殆どの問題をシステマチックに解く事が可能です。

和差算などを使用するメリットとしては 問題文のイメージ映像が脳に浮かび、システマチックな方程式という手法を使わずとも

男子の人数:(60+8)÷2=34人・・・・①

という式が立式出来る事です。

Sharari-man

工夫をして等式の処理ではなく、図的に解く手法
とも言えるかもしれません。

特殊算でないと解けない問題があるのか?

当たり前ですが特殊算でしか解けない問題はありません。

数学的な手法で全ての問題を解く事が可能です。

ただし、濃度算などにおいては方程式を立てて解くと大変時間がかかる場合があります。
濃度問題は天秤算を使えば圧倒的に早く解けます。

しかしながら、方程式を使用して天秤算と同様の解き方をすれば良いだけとも言えます。

愚直に立式し、等式の処理を進めれば最終的に同じ形の式が導出出来ますからね。

受験では
「限られた時間内で大量の問題を正確に解く」
事が求められます。

よって Sharari-man の主張としては以下のようです。

特殊算でしか解けない問題は無い
特殊算の方が解く時間が早い場合もあるが、それは方程式で同様の手法で解けば同じである
よって、受験算数の問題に慣れ、解法を沢山覚えさえすれば、特殊算・方程式のどちらを使っても早く解ける。

方程式を使っても良いのか?

学校によるかと思いますが、殆どの学校で使用しても問題無いと言われています。

部分点がどのように付けられているのかは公開されていませんから、部分点の面で不利にならないかは各学校に確認した方が良いかもしれません。

しかしながら、難関校においては『先取りをしているお子様』を咎めるような扱いはしないように思いますから、殆ど大丈夫でしょう。
中学~高校~大学数学を一生懸命学び、理解しているお子様にあえて、算数縛りで問題を解かせる。
このような不毛な事はしないように思います。

何のために受験算数を学ぶのか

以下の記事でも書きましたが 「希望の中学に合格するため」 です。

受験に特化した能力という事です。
これは中学受験に限った事ではなく、高校受験・大学受験でも同様です。
高校数学の「6分の1公式」なども受験以外に使う事は殆どありません。

ちょうど面白い動画がありましたので御紹介致します。

上の記事では 「中学受験算数は役に立つ?」 という議題に対して
「エンジニアにとっては役に立たない」という私見を述べました。

本動画からも 「受験」 というものの特殊性が伝わるのではないでしょうか?

東大 数理科学 博士 の方が 東大入試を解いて 71/120点です。

この得点は 指導のために東大過去問・京大過去問などの演習を実施し、訓練を積んだ私の結果よりも低い得点率です。

私の方が優秀だという話ではありません。
動画の方は 私よりも 100%数学の能力が高いはずです。
私と同様に過去問演習を実施した後に取組めばもっと高得点が取れたはずです。

以上の事から、受験算数・受験数学というものは 
「受験で高得点を取るための能力」 
を評価するものであり
「実際の業務・研究の能力」
を評価するものでは無い事が分かるかと思います。

これは 「受験勉強は役に立たない」 という意見ではありません。

受験勉強を通じて学んだ知見はとても役に立つが、受験勉強で高得点を取るためには、「高速で解く能力」「問題形式慣れ」「時間配分」など 実際の業務で必要とされる能力 とは異なる能力が要求される。
特に「問題形式慣れ」「時間配分」は実務においては殆ど役に立たないが、受験の得点に対する影響度は高い。

Sharari-man

受験勉強で得られた知見は実務においても役に立つが、受験で高得点を取るための能力の一部は殆ど役に立たない

というのが Sharari-man の意見です。

さて、話は変わりますが世の中には学歴フィルターが存在する事は明らかです。
一定の学力(受験で高得点を取る力)が無ければ就けない仕事が幾つかあります。

よって

Sharari-man

「やりたい研究をする」「なりたい職業に就く」という目標を達成するための過程として難関中学・難関大学の合格が必要な場合、それを達成するための手段として受験算数・数学を学ぶ必要がある 

という事です。

しかしながら、 「やりたい研究をする」「なりたい職業に就く」 という目標に対して 「中学受験」がどれほどの寄与率か不明です。

Sharari-man は 中学受験算数 と 大学受験数学の能力の相関が高いとも思いません。

Okusama

灘中高生は数学が得意な子が多いじゃない!

Sharari-man

疑似相関というものです。
算数が好きな子が大勢集まり、その延長線上にある数学を沢山学んだから数学が得意なだけです。

Sharari-man

算数の能力 = 数学の能力
ではありません。
数学の学習量×学習の質 = 数学の能力
です。 

Sharari-man

例外として 数Aの分野は受験算数がかなりカバーしておりますから、数Aは算数の能力と相関が高いと思います。

受験算数を通じて、計算が早くなる、数Aが得意になるなど、数学が得意になるための素地は得られるかもしれません。
しかしながら、数学の能力を高めるためには数学を学んだ方が合理的です。

Okusama

数学は簡単よ!
思考力が鍛えられないわ!

なんて仰られる方もいらっしゃいますが、恐らく数学をしっかりと学んでいないだけです。

数学を本格的に学ぶと大変難しいです。

Okusama

数学は簡単よ!

なんて仰られる方には是非、大学数学まで学んでみて頂きたいですね(笑)
大学数学とは言わなくとも、東大・京大・東工大あたりの受験数学を制限時間有りで解いてみて頂きたいですね!

長くなりましたのでまとめます。

受験算数を学ぶ目的は

「希望の中学に合格するため」

だけであると Sharari-man は考えております。

Sharari-man

あえて、追加するならば『楽しさを得るため』でしょうか。
Musukoや道場生は受験算数が『楽しい』と感じるようです。
『楽しさ』が得られるのであれば、受験算数に取組む意味もあるでしょう。

まとめ

特殊算というものは中学受験算数を解くためのテクニックの一つである。
方程式を使わず早く解ける場合もあるが、同様の解き方をすれば方程式で解いても同じ早さで解ける。
受験算数、受験数学は特殊な能力であり、それらが全て研究・業務に活かせる訳ではない。
受験算数と受験数学の能力の相関は低い。
大学受験や将来の業務(物理など)に活かすために受験数学を学びたいならば、愚直に数学を学んだ方が効率は良い。

特殊算などの受験算数を学ぶ目的は本質的には
「希望の中学に合格するため」
である。

ただし、受験算数はパズルゲームのような楽しさがあり、それを「楽しい」と思えるお子様は論理的思考力や粘り強く考える力や読解力を養成するのに最適ですから、楽しく学び進めて、それらを鍛えていけば将来大変役に立つとも考えています。

あとがき

この記事にも書きましたが、受験算数を学んでいる方を貶めるための記事ではありません。
目的が希望中学への合格ならば特殊算を学ぶのは有効だと思います。
しかしながら、受験算数を学んだからといって数学が得意になる訳でもありませんし、機械の設計が出来るようになる訳でもありません。

「希望の中学に合格するため」

と割り切って考えれば良いと思います。

大学受験も同じです。高得点を取るための能力が必ずしも将来役に立つとは限りません。
希望の職業に就く・研究を実施するためのステップと割り切って学習に取組んでも良いと思います。

ちなみに我が家と道場の場合、「楽しく興味を持って学んで欲しい」と考えておりますから、機械設計・機械力学などを並行して学んでおります。
このような学び方で進めても「受験で高得点を取る事に特化した学び方」をしている方々を上回る事は難しいと思います。実績としては最難関中学に合格した道場生もいますし、息子も偏差値70越えだったりしますが、トップオブトップになれるのは受験に特化した学習をした方ではないかと思います。

我が家の学習事例が少しでも家庭学習に取組む皆様の御参考になりましたら望外の喜びです。

ではまた!

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この記事を書いた人

日本で働く技術者です。
ブログ運営目的は我が家の学習情報提供を通じた社会貢献です。
地域貢献を兼ねて地域限定で算数の個別指導を行っています。

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