さて本記事では少し刺激的なテーマで受験算数について語ってみようと思います。
中学受験算数の定義
中学受験算数を明確に定義する事は難しいのですが、以下のように定義してみます。
公立カリキュラム(小中高)以外で学ぶ算数の技法 = 中学受験算数
例)
特殊算、計算の早さ、初等幾何、長文の条件整理などですね。
初等幾何は公立ルートで学びますが、極端な深掘りをあまりしないため、一応対象にしました。
一方、数列・集合・数の性質などについては高校数学で充分に学びますから除外しました。
中学受験算数って役に立つの?
エンジニア として働いた時にという前提です。
エンジニア歴うん十年のプロの意見として一定の信頼性はあるかと思います。
エンジニア業務で役に立つかどうか?
という前提です。
お間違えの無いように。
社会に出て、エンジニアとして仕事を始めてから算数が役に立つかと言えば・・・・・・
殆ど役に立ちません!
色々な方から叱られそうです。
中学受験算数を通じて得られた
- 論理的思考力
- 粘り強く考え続ける力
- 長文を読み条件整理をする力
- 読解力
は役に立ちますが、中学受験算数の技法が役に立つかどうかと言えば、殆ど役に立ちません。
特殊算や計算速度の早さが活かされるシーンは殆どありません。
「中学受験算数を経験したから出来る」という内容は殆ど無いように思います。
エンジニアの皆様、如何でしょうか?
ありますかね?
私自身、中学受験をしていませんが、業務ではそれなりの成果を挙げ、平均より随分多い収入を得ています。
また、上に挙げた能力は算数以外でも身に付ける事が可能です。
例えば
- 数学
- 機械工学
- プログラミング
- 自由研究・論文執筆
- クリティカルシンキング
- ロジカルシンキング
- ディベート
- プレゼン
- ファシリテート
- マーケティング
- 財務分析
これらを学び、上述したような能力を身に付けた方がよほど実践的です。
実務で使う学問を通じて身に付けた方が 100% 効率が良いはずです。
読者の方から
私立中学受験をする予定は無いのだけれど、中学受験算数を学んだ方が良いのかしら・・・・?
このような質問があった場合には
やらなくても大丈夫です。
上に挙げたような学習に取組んでいれば、エンジニアに必要な能力は身に付けられます。
このように解答しております。
算数は思考力・発想力が鍛えられるわ!
競技プログラミングやクリティカルシンキングや物理演習で同様の能力が身に付けられます。より実践的です。
どうやったら効率良く計算出来るか?
様々な数的性質を見抜く力が身に付けられるわ!
競技プログラミングや機械工学でも問題無く身に付けられます。
実戦的な理論体系を学びたいなら、圧力容器(JIS B8267)や鋼構造設計基準などを学んでも良いでしょう。
じゃ、じゃあ受験算数を学ぶ理由って何なのよ!?
受験というカテゴリーにおける相対評価(偏差値)を高め、難関中学に合格する事 以外に殆ど無いと考えて良いでしょう。
あえて挙げるなら身近な話題が多いため、お子様が興味を持ちやすく、楽しみながら上述したような能力を身に付けられる可能性が高い くらいでしょうか。
冒頭で述べた通り、お子様が数学・機械工学・プログラミングに興味があるならば、それらを通じて上述した能力を身に付けた方がより実践的です。
数学って役に立つの?
では比較として数学について考えてみます。
社会に出て、エンジニアとして仕事を始めてから数学が役に立つかと言えば・・・・・・
大変役に立ちます!
役に立つものが多すぎて挙げればキリがありません。
少し例を挙げると以下のようです。
本当に一部ですよ。工学の研究は物理学者・数学者の協業によって切り開かれて来たといっても過言ではありません。
- 統計
- 集合
- 論理(必要・十分・逆・裏・対偶・帰納・演繹など)
- 微分積分
- 複素数
- 三角関数
- 線形代数
- 解析
高校数学~大学数学のレベルは頻出です。
統計
経営・マーケテイング・性能評価でいつでも使用します。
かなり汎用性が高いです。
後述する線形代数も統計に寄与しています。
集合
マーケティングの分析などで使用します。統計に近いですね。
部品の標準化などを行う際に、標準化の効果分析などで使用します。
論理
こちらも汎用性の高いスキルです。
帰納・演繹などはマーケティングでも使用します。
逆・裏・対偶の考え方なども機械仕様や構造を検討する際に有用です。
例えば
Aという部品を軽くすると性能が良くなった・・・という評価結果があった際に
Aという部品が軽い ⇒ 性能が良い
Aという部品が重い ⇒ 性能が悪い?
性能が良い ⇒ Aという部品が軽い?
論理構造を考える事で効率良く仕様検討が出来ます。
実際は 品質工学的な手法を使い、S/N比などを用いてもう少し詳しく検討します。
しかし、基本的な論理構造を押さえておかなければ、結局的外れな結論になる事も多いです。
微分積分
言わずもがなですね。
微分積分は物理・機械工学・制御工学と相性が抜群です。
仕様検討・詳細設計・計算書作成など非常に使用頻度の高いスキルです。
サーボモータの制御や振動分析・応力計算など用途は多岐に渡ります。
複素数
業種によってはそれほど使う事は無いかもしれませんが、座標計算をする際に便利な場合が多くあります。
複素平面で演算すると簡単に計算出来る場合も多いです。
三角関数
物理・工学の計算で頻出です。
ベクトルを使った分力計算など計算書作成時に高頻度で使用します。
線形代数
近年の代表例は テンソル(行列・ベクトル)を使用した機械学習でしょうか。
ECサイトのおすすめ商品紹介機能でも使われていますね。
多変量解析、最小二乗法など統計的な計算手法としても大活躍しています。
AIプログラムの開発、機械学習を用いたロボット制御 などに将来取り組みたい方にとって 線形代数は非常に役立ちます。
解析
解析は微分積分(高校)の大学版というイメージで考えて頂ければ良いでしょう。
微積や級数を用いて関数の性質を解き明かす学問です。
物理などの工学分野で微分方程式が頻出です。
専門家以外の方でも分かり易いような内容にしてありますので一部正確性を欠いていますが、数学がとても役に立つ学問という事は理解して頂けたのではないでしょうか?
エンジニアだけど数学を殆ど使ってないわよ!
このような方も一定数いらっしゃると思いますが、「本当に必要ない」か「活用の仕方に気付いていない」のどちらかだと思います。
恐らく、後者の場合が殆どです。
なぜ中学受験算数に取組んでいるの?
否定的な意見を書きましたが、息子は中学受験算数の学習に取組んでいます。
道場性は全員が受験算数に取組んでいる訳ではありません。
数学、機械工学、プログラミングに興味を持ったお子様はそちらの学習を中心に進めています。
息子の場合は
算数ってパズルみたいで面白いね!
じゃあ算数の勉強もやろうか!
という感じで、興味を持ったから進めているだけです。
実務に活用出来るかどうかで考えれば当然、以下のような内容を通じて学んだ方が 効率は良い ですが お子様が興味を持つかどうかは微妙です。
お子様が興味を持って 「楽しい」 と思える学習内容(例えば算数)は カリキュラム的に効率が悪いかもしれませんが、能力向上の効率が良いです。
カリキュラム効率 × 楽しさ = 能力向上値
と考えれば分かり易いでしょうか。
楽しさが高ければ カリキュラム効率の悪さは補えると考えています。
- 数学
- 機械工学
- プログラミング
- 自由研究・論文執筆
- クリティカルシンキング
- ロジカルシンキング
- ディベート
- プレゼン
- ファシリテート
- マーケティング
- 財務分析
上記に挙げた内容以外にも色々な学問がありますが、結局のところ以下の能力を身に付け、社会でそれを活かす事が重要です。
- 論理的思考力
- 粘り強く考え続ける力
- 長文を読み条件整理する力
- 読解力
プログラミングが好きな子、数学が好きな子、ディベートが好きな子、工学が好きな子 道場生にも色々おります。
上に挙げたような内容であれば、概ね指導出来るので、子供達の興味に合わせて指導内容を変えている感じです。
数学については 「何をやるにしても必要な場合が多い」 ため ほぼカリキュラムに組み込んでいます。
という事で以下のような考えで中学受験算数に取り組んでおります。
興味を持って楽しんで取り組んでいるのならば、それは能力向上に繋がり、無駄ではない。
学んだ事をどう活かすか、どう能力向上に繋げるかが大事だと考えています。
単純に「楽しい」という気持ちで取り組めば、幸福感が高まる という理由もあります。
受験はそのうち変わるのではないでしょうか
いつになるかは分かりませんが、受験・教育はそのうち変わるのではないかと考えています。
社会で役に立つ頻度の高い学問だけを学びなさいと言っている訳ではありません。
例えば漢文・古文・歴史が教育課程から無くなれば、それを研究したいと思う方もいなくなり、それは社会にとって不利益です。
ただ、受験勉強という範囲学習に縛られ、幅広い学びを得られ難くなるのは問題だなぁと考えています。
以下の記事でこのような内容について述べております。
算数・中学数学・高校数学・高校物理に過度に縛られず、大学数学・工学などのもう少し実践的な内容を学ぶカリキュラムを構築しても良いと思います。
不思議ではありませんか?
ゲームに夢中になる事を否定する親御様が一定数いらっしゃいますが、算数だって上述したように別に役に立ちません。何ならマインクラフトなど一部のゲームでは空間認識能力・論理的思考力・プログラミングが学べるのだから、算数より実践的で有用でしょう。
この判断基準は 恐らく 受験に役立つかどうか? という観点から来るものです。
例えば、灘中学、開成中学に合格するための算数に関する学習時間を 数学・物理・プログラミングに費やせば 良いエンジニアとして活躍するための素地が出来るのになぁ と考えています。
AO入試などがもっと一般化すれば、範囲学習に縛られず、より広範かつ実践的な学習を行った学生が評価される時代が来るかもしれませんが、もう少し後になるでしょうね。
あとがき
さて、少し刺激的な内容を書きましたが、受験生の学びを否定するものではありません。
受験勉強を通じて以下のような能力は身に付けられると考えていますし、それは社会でとても役に立ちます。
- 論理的思考力
- 粘り強く考え続ける力
- 条件整理する力
- 読解力
最初の前提条件で書いた通り、「エンジニアとして活躍するため」という観点で考えれば、算数の深掘りよりも数学・工学を先取り学習した方が効率が良いというのは エンジニアの方からの異論は無いのではないでしょうか?
世の中には
エンジニア
プログラマ
医者
弁護士
会計士
など様々な専門家がおります。
学校教育では難しいかもしれませんが、各分野のプロの方が 興味を持った子供達に専門的な内容を教える寺子屋が日本各地にあれば良いのになぁ と思います。
我が家の学習事例が少しでも家庭学習に取組む皆様の御参考になりましたら望外の喜びです。
ではまた!
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コメント一覧 (2件)
Sharari-manさま
こんばんは。いつも刺激的な内容有難うございます。
私の場合は、
中学受験算数→ほとんど役に立たない
大学受験数学→ほとんど役に立たない
です。文系ではこのような感じかと思います。職業上必要な数学は大学で学ぶことでよいと思います。
しかし、
中学受験算数→楽しかった
大学受験数学→楽しかった
です。楽しさを相対的に見ると、
中学受験算数>大学受験数学
でした。
比喩的にいうと、
中学受験算数=自然で駆け巡る遊び、芸術的感性を磨く
大学受験数学=精密なプラモデルを作るような遊び、論理的技術を磨く
でしょうか。さらにいうと、
中学受験算数=人生の幅を広げる
大学受験数学=人生の質を高める
ような印象があります。
ですので明確な目標設定のない小学生が中学受験算数をする、中高生が大学受験数学をする、は理にかなっています。
しかし、明確な理系的将来設計がある場合は、
小学生時期に大学受験数学をする、さらにそれ以上を目指す、は正しい選択と思います。
結論としますと、本人に将来設計があるか、あるいは本人にあった将来を大人が描くことができるか、を踏まえて個々に学習設計していくことが肝要なのではないでしょうか。
ただ思いつきで書いてみました。文章も乱れているかもしれませんがご容赦願います。
また何か思いつきましたらコメントさせて頂きますね。
ぞうさん様
Sharari-manで御座います。
いつも私とは異なる視点からの考察をして頂きありがとうございます。
大変参考になっております。
>本人に将来設計があるか、あるいは本人にあった将来を大人が描くことができるか、を踏まえて個々に学習設計していくことが肝要なのではないでしょうか
全くもって仰る通りだと思います。
個々の趣味趣向、能力、適性は異なりますから、それぞれが「楽しい」「学びたい」と思える題材や教材を提供し、子供達の成長を促し、社会の発展に繋げていくのが私のような年寄りの役目と考えております。
また子供達が「楽しみながら学べる」という事が私にとってはとても大事な要素です。
「役に立つか?」という視点で記事を執筆致しましたが、中学受験算数を否定する訳ではありません。
子供達がそれを通じて、楽しみながら、様々な能力を身に付けたり、様々な事に興味を持つきっかけになれば素晴らしい事です。
子供達が楽しみながら成長出来る環境の提供に今後も尽力したいと考えております。
いつも大変勉強になるコメントありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
ではまた!